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こころの再生百人衆

芸能・文化分野の方々

井田 由美さん

日本テレビ キャスター


1957年生まれ。小学校3年から府立四條畷高校卒業までの10年間を大阪で過ごす。1980年、日本テレビ入社。83年、早朝番組の草分け「ルンルンあさ6生情報」の初代司会者となり、86年、夕方のニュース「ライブオン・ネットワーク」で日本初の女性アンカーパーソンをつとめる。2003年まで深夜のニュース「きょうの出来事」キャスター。現在は「報道特捜プロジェクト」司会や、様々な番組のナレーションを担当。文化審議会国語分科会委員として敬語の指針づくりにも取り組んでいる。

井田 由美さんからのメッセージ

言葉が通じない?!

私は、アナウンサーとして、言葉で伝え、表現し、聞き出す仕事をしてきました。

他者に思いを伝え、心を通わせるために、大切な言葉。
しかし、最近はその「言葉」が、世代間で通じにくくなっているようです。
語彙が違う、意味が違う、使い方が違う・・・。
「うわ、やばいよ、この味」と言うから、まずいのか、腐っているのかと心配すると、「ものすごくおいしい」という意味であったり、「試験、どうだった?」と尋ねても返ってくる答えは「ビミョー・・・」だったり。

ここで、「微妙とは何?はっきり答えなさい!」と怒ってみても、ひそかに辞典で「微妙」を引き「やっぱり最近の若者の言葉遣いは変だ」とつぶやいてみても始まりません。「微妙」と「ビミョー」は、名字は同じでも会ったことのない親戚くらい離れた言葉なのですから。

新人アナウンサーの研修でも、驚くことばかり。
話をさせると、出てくる言葉は「わたし的には~」「なにげにいい感じで~」「かなり(尻上がりの発音)」「~~じゃないですかァ(自分しか知らないことなのに)」・・・。
「そんな仲間うちの言い方が、幅広い年代の視聴者に通用すると思うの?!」と、私はついつい目をつり上げ、声を張り上げてしまいます。

もう何年かすると、「ウチ(の局)の敷居をまたいだからには、その言い方は許しません!」と注意しても、「シキイって何ですかぁ?」と聞き返されてしまうのかも知れません。日本人の生活は変化し、言葉も変化しています。世の中の流れに抵抗しても疲れるだけだから、いっそ若者言葉を許容し、自分も若ぶって染まってしまおうか、という大人もいます。
言葉がすんなり通じない苛立ち。理解不足、孤立。最近の、聞くだけで心が荒れるような事件の遠因になっているような気がします。

使う言葉が違う同士は、どうすればコミュニケーションできるのでしょうか。
先日、日本語研究の学者の講演を聴く機会がありました。日々学生と接しているその教授は、若者に寛大で、お話もおおらか。
「若い世代の言葉をまず受けとめましょう。発展途上にあるのだから、彼らはいわば“外国人留学生”。妙な言葉を使ってしまっている未熟さ、もどかしさは、彼ら自身もおそらく感じている。手垢の付いた言葉を使いたくないという、情熱と工夫が空回りしているのかも知れない。へんてこりんな言葉の奥にある真摯な気持ちを受けとめ、そしてわれわれ大人は、若者に媚びることなく、自分たちの語彙で答えればいいのです。」
学生たちに抜群に人気がある、その教授の秘訣を伺ったように思いました。日頃、小言ばかりで新人に接している私は、ひょっとすると若者の心を遠ざけ、閉ざし、彼らの上達を遅らせていたのかも知れません。

人間は、本来、他者に自分を理解して欲しい生き物なのです。ゆとりある大人が、子どもや若者の“片言”を受けとめ、成熟した言葉を返す。ここから、心を通わす最初の一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

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