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mizuno

故 水野 正好さん

ご冥福をお祈りいたします。  大阪府文化財センター理事長


奈良大学名誉教授(考古学・文化財学)
1934年大阪府生まれ。
文化庁を経て、78年から奈良大学文学部教授
94年から2000年まで同大学長。
2000年から財団法人大阪府文化財センター理事長、全国埋蔵文化財法人連絡協議会長
03年から日本文化財科学会長
【主な著書】
『図説 発掘が語る日本史4 近畿編』
『古代を考える 河内飛鳥』
『日本文明史2・島国の現像 文明の土壌』
『古代を考える 近江』
『「天皇陵」総覧』
『三角縁神獣鏡・邪馬台国・倭国』

故 水野 正好さんからのメッセージ

「みんなが和やかになればいい」

私が、歴史に興味を持ち始めたのは、高等学校1年生のときです。昭和25年年ごろ、終戦後ということで、本屋にいい本があまりありませんでしたが、難波道頓堀の古本屋さんで、たまたま開いた本に感激。森本六爾さんの『日本考古学研究』という本でした。「わっ、すごい。欲しい!」と思いました。当時、うどんやパンが10円の時代でしたが、その本には400円の値段がついていました。「絶対買いに来るからおいといて」って頼み、毎日読みに行く(笑)。昼ごはん代に10円もらっていたので、40日間昼食を抜いて400円貯めて、買いに行きました。おじさんは「長いこと、通ったね。」と言って1割負けてくれました。うれしかったなあ。これが自分が買いたい本を自分で買った最初です。考古学を勉強するきっかけとなる本でした。

まけてもらった40円で、帰りにナンバの蓬莱で豚饅をおふくろと親父と弟の分を買いました。親父に「どうしたんや?」って聞かれて、「本買うたら、まけてくれてん」って言ったら、「何買うたんや」、「この本や」、「なんぼした」、「400円や」って言ったら、びっくりしていました。「思い切ってよう買うたなあ」って目を細めて手にとってくれたことを憶えています。

私は、京都大学を落ちたので、大学では考古学は習っていません。大学外の、大阪府教育委員会の社会教育課におられた藤沢一夫先生に仲良くしていただきました。先生は常々「自分の研究したいことを時間をかけてやれば楽しい。」とおっしゃっておられました。本当に心やさしくて、大きな仕事をされた方でした。

そのころ、中之島図書館によく通って、たくさんの本を読みました。お金がなくて、本は買えない。そこで、ほしい本は文章や図、写真も全部書きとりました。手で書き写すと文章を覚えるし、「ああ、この人は想いをこんな風に書いているな」と中身に深く関わってくる。書き手の癖までわかるようになります。今は、皆さん、何でもコピーになってしまったので、手で書き写す利点を失ってしまいましたね。若いときは、人としてのあり方が広がる時期だから、何にでもチャレンジして、たくさんのいろんな本を読み、書き写すのがいいですね。ただ、僕は高校時代に、好きなことばっかりやっていて、英語の勉強はしなかった。それが今一番の心残りなことです。何でもやろうと思えば良かったですけどね。僕は、民俗学や万葉等、考古学を中心に、本を読んで、読んで、読みまくって、そして今もなお読んでいますが、訳本を通じてしか洋書は読めない、本当に残念です。

今の時代、ほんとに大事なのは「和やかな雰囲気、お互いが自然に出せるようになること」だと思います。私もいい年になりましたが、大事なことは、「自分のまわりの人々に和やかな雰囲気が、自然にひろがり、そうした世界がつくれる、そうした力が身についてくれればなあ」と思っています。自分の周りが和やかでお互いが微笑んでおられる方が楽しいではありませんか。

そのためには、みんながお互いに関心を持つことが必要ですね。今は人には「無関心」を装う風潮があるように思います。隣で困っている人がいれば、無関心を装うより、できれば自分から手助けをして上げたらいいし、何かいい方法はないかなあと近くの人と相談をして上げたり、みんなで話し合って手を打てばと思います。

人間はあかんところがあっても、必ずどこかに良いところがあります。社会はもう少し柔らかい構造でないといけないと思います。今日は批判がきつい時代です。しかし、本当はのびのびと勉強や仕事が心行くまでできる雰囲気が大切ですね。そういう環境をみんなで作っていく必要があるのではないでしょうか。

大阪は、良い意味で「曖昧な都市」です。大都市だからたくさんのバラエティがあって当然です。でも最近、大阪が少し元気がないのは、ひとつは「未来の大阪に無関心」「皆が集まって話さないこと」が原因のように思います。経済界が空洞化していると良く言われますが、大事なことは、大阪に根ざしていた企業がなぜ大阪を捨てて、他の都市に出てしまったのか、一度真剣に考えないとダメですね。東京の魅力は何なのか。一極集中反対と言いながらも、東京に全てが集中していく、そして東京で全てが決まっていく、そういうしくみに日本全体がなっているのです。

しかし、一極集中は人間を壊してしまいます。ゆっくり少しずつお互いの心の絆を強くしつつ、慌てることはない、味わい深い文化をつくり前に進めさせましょう。いろんな多様性があり、多様性の良さを崩さないよう芳醇な香りを深めていくのが、現在の大阪に求められているのではないでしょうか。そうすると、他の都市もなるほどと言ってくれる、誇り高いいい都市になりますよ。

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