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こころの再生百人衆

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魚住 絹代さん

大阪府教育委員会訪問指導アドバイザー


1964年熊本県八千市
1982年法務教官となり、以後、福岡、東京、京都の少年院に12年間勤務。非行少女の立ち直りに携わる。2000年に退官後は京都医療少年院で音楽療法の講師となるかたわら、2002年からは、大阪府の公立小・中学校に、スクールサポーター、家庭教育サポーターとして勤務。子ども、家庭、教師の相談支援をしている。2006年度は、大阪府教育委員会訪問指導アドバイザーとして、不登校対策にも取り組む。著書に「女子少年院」(角川書店)「母親が知らない娘の本音がわかる本」(大和出版)「いまどき中学生白書」(講談社)「みんな抱きしめたい」(大和出版)がある。

魚住 絹代さんからのメッセージ

子どもの試しと大人の本気

職員室前の廊下で、ツバを吐く中学生の少女達がいた。

「こら、何やっとるんじゃ!」「アカンでー」「汚いやろーがぁ」「拭きなさいっ」 通りすがりに口々に叱っていく先生を無視して、少女達は挑戦するように吐き続ける。言えば言うほど汚れていく廊下に、そのうちあきらめたように誰も言わなくなった。

そんな中、若いサポーターが通りかかった。
ふんぞり返ってツバを吐いている少女に、「こら、アカンやろ。汚れるやろ」と言うと、職員室に消えて行った。 少女達は鼻で笑い、次なる標的を探していると、サポーター先生が雑巾片手に現われた。

しゃがみこんでせっせと廊下を拭き始める姿に、少女達はいっしゅんひるんだが、「なんだ、コイツ」というように顔を見合わせた。いたずらな目を光らせると、「おもしろいやんけ」とばかりに、ますますツバを吐き始める。

先生は、そのたびに「こら」「アカン」「やめろ」と言いつつ、せっせと雑巾の手を動かす。先生の頭の横、思いっきり手の届かない遠くへ、少女達はねらいをつけて勢いよく飛ばした。

「アカン。もう、ないわ」
吐くツバもなくなった頃、少女達がくやしそうに言った。
「そやろ。廊下もぬぐってぴかぴかになったわ」
立ち上がった先生の笑顔に、少女達もほどけたように笑った。
それからは話すのに、ツバも雑巾もいらなかった。

いたずらをする子、困ったことをする子は、どうつながったらいいかわからないでもがいている。
思春期の子どもは、言葉で「困ってる」「かまってよ」「どうしたらいいの」「助けて」と言えない分、行動で訴えてくるのだ。
特に激しい言葉を使い、なぜそんなことをするのか理解できないことをやる子ほど、強く求めている。

悪さをしながら、文句を言いながら、無視しながら、拒絶しながら、「この大人はこの自分にどう出るか」と、大人の出方をじっと見ている。
口で叱るだけの大人、見て見ぬフリの大人には、「フン、どうせ」とせせら笑いながらも、さびしさの鎧に身を固めていく。

彼らが求めているのは、本気で自分に近づいてくれる大人だ。
いくら、「どうしたの」「話してごらん」「教えてよ」と口で歩み寄ろうとしても無駄だ。
それが本気かどうかは、彼らの感性で計られる。
数々の試しの中でようやく彼らが納得できて、はじめてつながれるのだ。それには、とても時間がかかる。

かく言う私も、余裕がないと、「ダメじゃない」「それはね」と経験や理屈が先走ってしまう。
いかに純粋に、その子の心に向かい合えるか。
ひとりひとりの子どもとの関わりの中に教えられ、若い純粋な感性と情熱には、原点に立ち返る日々だ。

※ 写真は平田尚加氏撮影

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