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こころの再生百人衆

芸能・文化分野の方々

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七世竹本住大夫さん

人形浄瑠璃文楽大夫


昭和21年 二代目豊竹古靱大夫に入門。
昭和35年 道頓堀・文楽座において九世竹本文字大夫を襲名。
昭和60年 大阪・国立文楽劇場において七世竹本住大夫を襲名。
平成元年  国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。
平成17年 文化功労者として顕彰される。
芸術院会員
主な受賞歴:芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、大阪芸術賞、勲四等旭日小綬章叙勲、
第45回毎日芸術賞、第56回日本放送協会放送文化賞、2007年度朝日賞など多数

七世竹本住大夫さんからのメッセージ

「文楽はこころと情」

私は、子どものころから野球が好きで、今も高校野球を観て感動しては泣いております。野球と文楽とは相通じるものがありまんねん。文楽は、浄瑠璃語りがピッチャーで、三味線弾きがキャッチャーです。そして、人形使いが内野手又は外野手です。ピッチャーが乱れてきたら、キャッチャーもリードしにくく、守ってるものも守りづらいです。ピッチャーがリズムよく投げてたら、みんなが守り良く、そういった意味で文楽は太夫がしっかりせないけまへん。

今、大阪の経済・文化・芸術が停滞しているようにいわれますが、我が田に水引くようですけども、芸術・文化が潤えば、街ももうちょっとは潤うと思うんです。私は芸術・文化、古典芸術そういった日本古来のものにもっと親しみを持っていただいて、もちろん洋楽でも結構ですが、もう少し芸術・文化に政財界の人も興味を持っていただければ、少しは街が潤うのではないかと思うのです。

海外公演もよく行きましたけど、どこの国へ行っても1000人規模の劇場が満員になります。外国の人が、日本の古き良き文化を知ろうとしてくれたはります。それがありありとわかり、外国でも高い評価をくれてはるのです。

歌舞伎や文楽では、身代わりとか切腹など悲しい内容が多いですが、テーマは親子の義理人情、主君への忠義です。曽根崎心中の最後の心中の場面では泣いたはる外国人の男の人もいたはりましたし、壺坂霊験記は夫婦の情愛が一番よくわかる芝居ですが、外国でたいへん喜ばれました。日本も外国も情愛、愛情という心は一緒やと思います。
今の日本では、この「情」ということがあらためて大事やと思うのです。厳しい教育はせんとあかんと思いますが、厳しさの中に優しさがあり、温かさがあったら、それは子供たちに伝わっていくと思います。優し過ぎてもいかんし、怒り過ぎてもあかんし、そこの度合いが難しいのですけど。それはクラブ活動や勉強でも同じことですけども、家庭では、親子の会話が必要やないかと思うのです。私が子供の時分は親に叩かれたりもしましたけども、親が芝居や映画によう連れて行ってくれました。今は、親が子供を芝居や映画に連れて出歩くということが少なくなっているように思いまんなあ。

私たちは、プロの社会ですから、弟子には厳しく言って教育します。人様に義理人情を語り、情を伝えていくのが使命で、おもしろいものをやったら笑ってくれはる、悲しいものやったら泣いてくれはる、これが当たり前でんねん。悲しいものやって泣いてくれはれへんのは、よっぽど演者が悪いのです。技術も大事ですけど、まず基本を覚えて基本に忠実に素直にやっていけば、そこに何かが出てきて、その何かがお客さんに伝わって、泣いたり笑ったりしてくれはると思います。浄瑠璃は、技術プラス人間性で、最後は人間性やと思います。

野球にたとえて、弟子によく話ししますが、野球でも基本がわからなかったら、ファインプレイはできるもんやおまへん、練習の成果です。上手にやろうと思っても絶対上手にやれまへん。お客さんに「あいつら下手やけど一所懸命やってんなあ。また行ったろか。」と、そういう気になってもらうと、また劇場まで来てくれはります。私は62年やってますけど、未だに迷ってますねん。100点満点はとれまへん。基本に忠実に素直にやる、これしかないんです。

私は良い指導者に恵まれ、何でも学校の先生によく相談しましたし、可愛がってくれはりました。夏休みに一週間、先生の家で勉強教えてもろうたこともありました。今、そういう師弟の間柄が、水臭くなったように思いまんなあ。

私は、ファンの人にも恵まれ、20年、30年、40年と、長い間応援してくれたはる方が大勢いたはります。うちの弟子にも、細く長くつき合いしてもらうようにせなあかん。それには、人間性が大事やと言うています。

楽してお金儲けしようと考えたらあきまへん。努力して、汗水流して働いて、それで「ああ、けっこうや、働いたおかげやと思って感謝せなあきまへん。」どんないい仕事でもその人の心がけが悪かったら、悪い仕事になるし、悪い仕事でもその人の心がけが良かったら、いい仕事になります。文楽の太夫でもそうやと思います。若い頃から、全力投球して怒られて恥じかいて、それで成長していくのです。若いときにもっと苦労せなあかんと言うのですが、今の子はピンときまへんな、周りの環境が結構すぎますねんなあ。
私は、親の反対押し切ってこの道に入りました。大夫になってからは、みんなの前で怒られ、大舞台で恥かき、舞台から降りてきて怒られ、年がら年中怒られてましたなあ。でもやめようと思ったことはおまへんなんだなあ。先輩、師匠方にもやめろとはいっぺんも言われなかったです。
何百年もかかって、先輩が受け継いでこられた文楽を、次代の人に伝えていくというのが私たちの責任です。私たちが一所懸命勉強して、お客さんを引きつけ、お客さんを感動させる芸をやらないかんと思うのです。

大阪は、ええとこでっせ。私は大阪生まれの大阪育ち、それを自慢にしてまんねん。それがこの頃、あんまり自慢できんようになってきました。大阪の情緒のあるええところが少くのうなって、大阪弁も乱れてきてますしね。本来の大阪弁とは違います。みんなで、大阪弁や日本の言葉を大切にし、もう少し温かみのある社会、情の深い大阪にしたいですね。

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