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こころの再生百人衆

芸能・文化分野の方々

gengetsu

玄月さん

作家


1965年2月10日大阪市生まれ
大阪市立南高校卒業
2000年 「蔭の棲みか」で第122回芥川賞受賞
近著に「眷族」(講談社)

玄月さんからのメッセージ

「周りの人に関心を持って」

僕が中学・高校生の頃と今の子ども達を比べると、僕らの頃の方がよっぽど荒れていましたし、環境は良くなかったように思いますね。学校の環境が良くなって、子ども達も良い子らが多いような気がします。

良い子ども達が多くなったのは、結局おとなしい、あるいはおとなし過ぎる子、ある意味コミュニケーションの取りにくい子どもが増えているのではないかと思います。もちろんそれは、携帯電話やインターネットなど、子どもを巡る様々な環境も影響しているのでしょう。今の子どもは、それら抜きでは生活しにくだろうとも思います。

僕らの時代は、例えば友達の家に連絡取るにも、常に親を通じてしかできなかったですね。彼女に電話するのも同じで、電話がかかってくるような時間には、電話の前でじーっと待ったりしてね(笑)。だから友達とか家族以外の者とのコミュニケーションを取るのに、親が介在しないといけなかった。今は、親の関与抜きで子どもたちが、どんどん自分たちのつながりを作っていくのが可能になっています。そのことは結構大きな変化です。

こうした文明の利器は、あるものはあるものとして、なくすことはもはやできない。その上で必要なのは、自ら積極的に他者と関わろうとしていく気持ちではないでしょうか。自分が大人になって感じることですが、子どものときから他者と積極的に関わっていくことをしていけば、もっと人生豊かになっただろうなと思います。

例えば、電車に乗っていて高齢者や身体の不自由な人に席を譲るというのも、積極的なコミュニケーションのとり方です。昔からあることだけど、席をかわるのがあたり前の人に対して、知らんぷりする若者がいます。そういう若者を端から見てると、やはり心が苦しくなってきます。自分の世界にこもることは、すべてが悪いことではないけれど、回りをよく見たり、観察することは、すごく大事だと思います。今の子ども達が、悪意があって無関心であるとは思っていません。内向的なんですよね。照れもあるし、恥ずかしいしという気持ちもあって、表現しきれないのだと思います。それで、顔は仏頂面を続けている。

そんな子ども達でも、どこかに優しい心を絶対持っています。もしも自分が人のために何かをして、その人が喜んだとしたら、本人もとても喜べるはずです。心が貧しいからなどではなく、ただその表現の仕方がわからず、不器用なだけだと思います。

少子化の現在は、子どもの数が少なく、同年代の子どもの中で、もまれることが少ないせいかもしれません。僕の子ども時代は、同年代の子どもがいっぱいいたし、子どもの数が多かったから、かなり揉まれて大きくなってきました。しかし、少子化の時代、どうやって揉まれるかは、なかなか物理的に難しいですよね。また、他者とのコミュニケーションも、大人が何かを設定して上から押しつけても、変われるものではないですからね。

子ども達は、自ら身の周りを見ることが必要だと思います。たとえば一番身近な親でも兄弟でもいいから、よく観察することですね。高校生にもなると、たぶん親のことなんて見てないだろうと思うのですが、父親がどんな仕事しているのか、母親が家でどんなことしているか、それを観察する。そうすると自ずと自分の立場がわかってくる。ああ、自分は周りの人のおかげで生きていけるんだと。その上で、自分も人のために何かしてというような発想が出てくるんじゃないかと思います。自分以外のものを観察すれば、自ずと、自分自身が変わってくるのではないかと思います。

それから、僕が実際に、高校生の親であることから言えるのですが、子育ては試行錯誤ですね。ただ、筋だけは一本通しておかないといけないと思います。ある程度のことは本人の自由にさせているけど、これだけはあかんというのは絶対に譲らない、子どもにもそれを分からせておくっていうのが大事だと思います。ここまではお前の好きにせえ、ここからは何があっても一歩も引けないぞという態度を示しておくといいのではないかと思います。

だから、大人にも、子どものことをよく見よう、観察してみようということは、言えることだと思います。自分にも子ども時代があったわけですから、想像力を働かすことが大事ですよね。「思いやり」は、相手のことを考えることなので、想像力が必要です。大人は、自分の子ども時代は断片しか覚えてないけれど、それでも振り返ることは出来るから、そのときの自分に戻って子どもたちのことを考えると「ああそうか」って気づくことがいっぱいあると思います。

それと、子どもと「寄り添う」、「見守る」という気持ちが重要ですね。「寄り添う」「見守る」ことができたら、子どもはそういうことを肌で感じ、親の愛情を感じるものだと思います。対決では何も生み出さないですからね。でも、それがなかなかできないのが、人間の面白いところですね。だから、子育ては、子どもの成長とともに、大人も一緒に成長していくものなのですね。

大人も子どもも、互いをよく観察して、想像力を働かせてほしいですね。そうすれば、一気には良くならなくても、少しずつでも、殺伐とした世の中の雰囲気も、柔らかく、和やかになるのではないでしょうか。

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